体にいいなすの話

なすの栄養成分

 なす果実の成分は栄養価やカロリーの点からみれば、他の野菜と比べて特に多いほうではありません。なすの栄養的な主成分は、94パーセントの水分と糖質です。下の表は代表的な果菜類なす・トマト・きゅうりの果実を分析して比較した結果ですが、野菜からとる栄養としての重要な無機物のカルシウム・鉄分・カリウムの含有量は比較的多いほうですが、ビタミン類については、トマトやキュウリと比べてとくに多く含むものはありません。しかし水分の多い「なす」は漬物に最適です。とくにヌカ漬けにすると半日程度で水分が90パーセント以下、ビタミンB1やカリウムが2倍にもなり美味しさや栄養分が高くなります。
エネルギー タンパク質 脂質 糖質 無機質 ビタミン 食物繊維
カルシウム カリウム A効力 B1 B2 C
単位 kcl g g g mg mg mg IU mg mg mg g
なす 18 1.1 0.1 3.4 16 0.4 220 23 0.04 0.04 5 1.8
トマト 16 0.7 0.1 3.3 9 0.3 230 220 0.05 0.03 20 0.4
きゅうり 11 1.0 0.2 1.6 24 0.4 210 85 0.04 0.04 13 0.4
(可食部 100gあたり)  「日本食品標準成分表」より

なすの効用
 なすは栄養的に特別なものは含んでいませんが、生体調節機能が優れているといわれています。なすの皮の紫黒色の色素、ナスニン・デルフィニディン・ヒアチンなどを含むアントシアニンと呼ばれるものや果実の中に含まれていて一般になすのアクと呼ばれるクロロゲン酸などの抗酸化物質のポリフェノールを多く含んでいます。 このポリフェノールとは赤ワインやカカオにも多く含まれていて、このごろは動脈硬化を防ぐ作用もあると注目されている成分です。そのほかにも「なす」は、変異原物質(発ガン物質)によって体細胞が変異を起こし、ガン細胞に変化することを防ぐ作用が野菜の中でも極めて強いといわれています。下の表は一般に発ガン性物質と呼ばれている数種の変異原物質を野菜ジュースがどの程度抑えられるかを調べたものですが、数ある野菜の中でも「なす」が飛びぬけて優れています。
資料1  数種の変異原物質の活性に及ぼす、野菜ジュース中の高分子画分の抑制  (1990 篠原)
抑制率 (%)
変異原物質 ニトロソグアニジン AF−2 ベンツピレン ステリグマトシスチン アフラトキシンB1 Trp-P-1
ブロッコリー 26.9 14.7 40.8 34.5 55.5 75.2
な    す 29.5 59.4 76.4 66.4 89.1 86.2
ホウレンソウ 21.4 8.0 40.8 24.8 55.5 55.2
*ニトロソグアニジン・・・亜硝酸とアミン化合物との反応によってできる変異原物質(発ガン物質)
*AF−2・・・以前、防腐剤として使用されていた変異原物質(発ガン物質)
*ベンツピレン・・・自動車の排気ガスやタバコの煙に含まれる変異原物質(発ガン物質)
*ステリグマトシスチン/アフラトキシンB1・・・マイコトキシンと総称される、カビなどが作り出す変異原物質(発ガン物質)
*Trp-P-1・・・アミノ酸の一種のトリプトファンの焼き焦げから分離された変異原物質(発ガン物質)
 しかし、「なす」に限らず野菜を食べる場合、生で食べるほかに熱をかけて調理をしますよね。この場合せっかく生の状態で体にいい栄養成分を持っていても加熱をすることでその成分が壊れてしまっては困ります。とくに油で揚げたり、煮たり、焼いたりといった調理をすることの多い「なす」です。下の表は野菜や果物のジュースを非加熱のものと過熱したものでTrp・P−2という変異性物質(発癌物質)の抑制効果を比較したものですが、「なす」に含まれる成分は熱にも強いことを示しています。
資料2  Trp‐P‐2(発ガン物質)の変異原活性に及ぼす野菜抽出液の抑制率  (1990、篠原)
非加熱 (%)  加熱 (%)
野菜の種類
ブロッコリー 79.5 74.0
ご ぼ う 67.8 64.6
キャベツ 35.8 21.7
にんじん 24.5 26.3
きゅうり 75.5 58.3
な   す 82.5 82.3
小 松 菜 77.6 75.3
玉 ね ぎ 35.8 12.1
ピーマン 73.0 52.0
ジャガイモ 25.3 12.3
大  根 48.3 39.3
ホウレンソウ 76.7 74.2
ト マ ト 46.1 26.8
果物の種類
甘  夏 20.0 14.4
り ん ご 58.0 35.4
ハッサク 50.4 53.2
ハッサク果皮 61.2 61.9
ハッサク袋 41.8 37.2

資料1および2は、K.Shinohara, T.Fukuda, K.Iino and Z-L.Kong; Effect of Aqueous Dialyzates of Some Freeze-dried Vegetables on the Mutagenicity of Trp-P-2 toward Salmonella typhimurium TA 98 and TA100. Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi(日本食品工業学会誌), 38, 235-241 (1991)より引用しました。

薬用としてのなす
 ナス科の植物には、アルカロイドを含むものが多いのが特徴です。アルカロイドとは天然の有機塩基類でアルカリ性の反応を示します。多くは苦味があり薬としての効果または毒性をもっています。代表的なものにタバコに含まれるニコチンやお茶やコーヒーに含まれるカフェインなどがあり、インドからヨーロッパへ「なす」が伝えられたときには薬用として利用されたともいわれています。熱帯地方などでは、ナス科の野生植物の葉を麻酔剤、種子を刺激剤として使用していたという記録もあります。日本でも民間療法として、ナスのヘタを黒焼きにして塩を混ぜ歯槽膿漏の予防として使ったり、ヘタの切り口の汁をイボとりに使うといったことがなされているようです。